「チャイルド・ケモ・ハウス」、来春オープンへ:進捗レポート

2012年11月12日

~TOOTHFAIRYプロジェクト支援先
小児がんの子供と家族の『夢』を集めた治療・滞在施設
「チャイルド・ケモ・ハウス」、来春オープンへ~

5月に地鎮祭を行い、あれから半年。
現在の工事の進捗状況をレポートします。

狭い病室で治療を受けながら勉強や遊びの“日常生活”を強いられる小児がんの子供たち。付き添う母親らもカーテンに仕切られただけの簡易ベッドで熟睡できず、声も潜めがち。「友だちや兄弟と思い切り遊びたい」「ベッドを下りて床に寝ころべる広さを」…こんな小児がんと闘う子どもと家族の『夢』を集め、まるで家にいるような環境で治療ができる施設が『夢の病院』~チャイルド・ケモ・ハウスである。
専門治療が受けられ、付き添い家族にも配慮した我が国初めての滞在施設で、来春のオープンを予定している。
   チャイケモ外観全体図.jpg

(写真1:建設が進む小児がんの子供と家族のための施設)

NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス(大阪府茨木市、大薗恵一理事長)が設立人となり発足した公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金が神戸市から土地を借り、今年5月に着工した『夢の病院』~チャイルド・ケモ・ハウスは、神戸新交通のモノレール「医療センター駅」から徒歩5分、神戸市中央区のポートアイランド内のミドリが広がる一角にある。
外観はまだブルーのシートがスッポリ。内部を覗くと、骨格がほぼ形成され、配線コードが天井からぶら下がる中を作業員がひっきりなしに行き来していた。「工程を一つ一つ積み重ねており、工事は順調」と現場責任者。
  チャイケモ内装.jpgのサムネール画像

 (写真2:建物の内部は、配線工事の真っ最中)

鉄骨造り平屋建て、総事業費7億円。設計図では敷地面積3500平方メートルの3分の2が児童や家族が住む共同住宅(19世帯収容可能)、残りが診療所スペースで、医師が24時間常駐する予定。この施設構想に共感した建築家の手塚貴晴氏、手塚由比氏が協力し、資金面では日本歯科医師会日本財団で進める「TOOTH FAIRYプロジェクト」が3億円、積水ハウスが総合企画設計・施工に加えて2億円をサポートした。またNPO法人自らも2010年11月に一般財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金(2011年8月公益財団法人に)を立ち上げた。
  完成予想図模型.jpg

 (写真4:完成予想の模型)= NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス提供

田村亜紀子事務局長によると、施設建設のきっかけは2005年ごろから始めたアンケート。小児がんの子どもが、社会に笑顔で生きていけることをモットーに啓蒙運動や研究活動などを進める中で、患児や家族にとって病院がどんな場所であってほしいかを尋ねた。子どもらからは「怖くない白衣」「友だちと一緒にいたい」などの声、母親からは「付き添い時間の少ない父親との関係が薄れた」「子どもの前では夫婦喧嘩もできない」などの不満も。声をつないでいくと、“家にいるような病院”像が浮かび上がった。
集合写真.jpg

(写真5:チャイルド・ケモ・ハウスのスタッフ、左から2人目が田村亜紀子さん)

「最初は“病院”としての施設を作りたかったのですが、“病院”となると付き添い家族のスペースが限られたりして“家”から遠のいてしまう。そのためクリニックとハウスの併設という形になった」と田村さん。しかし、「このような施設は現在の医療制度では病院とは認められず、病院としての補助や診療報酬が受けられない。日本全国の歯科医師の方々のご支援を頂いて立てた施設。継続的な運営をしていくために募金活動により一層力を入れていきたい」とも。それほどに患者サイドに立った新しい施設…きょうだいや友だちと一緒に過ごせる時間があり、「高くして見飽きない天井」や「大人が感情を抑えなくても良い部屋」など、アンケートに示された夢の実現に、患者サイドだけでなく医療関係者ら各方面の期待は大きい。            ◇