対象地域・学校数・支援金額

事業対象地域 ミャンマー連邦シャン州、イラワジ地域
ミャンマー連邦:面積676,553km²、人口約62,000,000人(135民族)
シャン州:面積155,800km²、人口約5,500,000人
イラワジ地域:面積35,138km²、人口約33,065,000人
建築学校数47校
支援金総額323,709,530円(2021年3月末現在) 
支援金には、校舎建設資金のほか、地域開発収益事業の支援プロジェクト、農家の生活・収入向上のための農業改良普及プロジェクトに必要な経費を含む。

ミャンマーの現状・課題と事業概要

<現状>

高まる国際社会の注目

1988年の軍事政権発足以来、国際社会から孤立していたミャンマー。 中国、インドなど5カ国と国境を接し、東アジア、東南アジア、南アジアをつなぐ要衝に位置する同国は、 2011年3月のテイン・セイン政権発足後、大統領とアウンサンスーチー氏との対話や政治犯の釈放などの改革を急スピードで進め、 2015年には総選挙を実施。アウンサンスーチー氏を中心とする新政権が発足した。

親日的な国民性

ミャンマー人には熱心な仏教徒が多く、相手を立てて周囲との調和を重んずるなど日本人に通じるところが多い。 また、大戦後初めて日本と戦後賠償を結ぶなど親日的な色合いが強い国でもある。 ASEAN最後のフロンティアとも呼ばれた親日国ミャンマーにおいて、インフラ整備や教育環境充実といった社会的基盤の強化が求められており、 日本がこれまで同国と築いてきた良好な関係を活かした国民生活向上のための支援が今求められている。

<課題>

教育格差

ユニセフの統計によればミャンマーにおける識字率は男女とも9割を超えており、教育環境は比較的高い水準にある。しかし実際には、都市地域と少数民族が多く住まう辺境地域の間に大きな教育格差があり、その原因には辺境地における学校施設の不足や老朽化、地域の貧困による学校運営経費(教員雇用など)不足などが挙げられ、子どもの受け入れが満足に出来ていない。

伝統的に僧院などで基礎教育を担っていたことが今日の教育水準の高さ支えていると考えられるが、学校が遠いことを理由に中学進学を断念する子どもも多く、今後ミャンマーが更なる発展を遂げるには、正規教育を充実させ、多くの子どもたちに高等教育の可能性を開くことが必要となっている。

紛争地域への支援

また、昨今急速に改革が進んでいるとはいえ、反政府勢力による武力闘争がごく最近まで続いていた地域も多く、そういった地域には治安の悪さから開発援助機関はもちろんのこと、地域出身のミャンマー人さえ戦いを逃れ帰郷できない状況であった。しかし最近の民主化の大きなうねりの中で、段階的ではあるがアクセス可能な場所も出てきており、紛争で荒廃した地域に迅速な支援が求められている。

<事業概要>

<事業の目標>

詳細事業内容

1) 校舎建設プロジェクト

校舎建設プロジェクトを実施する上で最も配慮すべきことは、地域住民の自立心と自主性を尊重した綿密な協議を行うことであり、地域住民なりの考えや意向が校舎建設プロジェクトに反映されることで、その後の学校の利用・運営に対する責任感を高めることに繋がる。
そのため、建設の準備・実施段階では地域住民とのコミュニケーションを十分に図り、地域住民側の責任・役割分担を定め、彼らの自助努力を出来る限り引き出すような働きかけを行う。
支援対象サイトの状況によって、校舎建設は増築、改築、新築のいずれかになるかを検討し、新設校舎に新たに必要となる備品(机椅子、黒板等)の整備についても配慮する。
また、教育の場の質の向上、地域のプライマリーヘルスケアの充実という視点から、学校内のトイレ、給水タンクの整備も支援の対象とする。

また、本事業ではミャンマー政府教育省との調整・連携を前提としているため、校舎建設後には当該校に必要な教員数が確保され、施設の充実(教室数の増加)に伴う小学校から中学校、中学校から高等学校への昇格などの可能性も高まる。
学校が遠いことを理由に上級学校進学を断念する児童が多いことを考えれば、受益者は当該校の位置する校区に留まらず、周辺地域の教育事情も併せて改善されるものと期待する。

2) 学校運営支援を目的とした地域開発収益事業の支援プロジェクト

先に述べた学校の運営、児童の就学に係る問題の解決を図るため、校舎建設後にそれまでの地域学校建設委員会を地域開発委員会として再構成し、これが主体となって学校の運営支援を行うための地域開発事業(収益事業=ソフト・プロジェクト)を実施する。

このソフト・プロジェクトの原資の提供、計画策定・運営の指導を行い、個別技術については人材や情報の提供などを行う。ソフト・プロジェクトは学校支援のみをターゲットとしたものから、村の生活向上を促すための地域開発的要素が大きいものまで、地域それぞれのニーズや開発に対するビジョン、キャパシティに応じて住民自らがメニューを決めることが前提となっており、これまでも農園、養豚銀行や畜産技術の向上、農業金融、あるいは水力発電による電力供給、簡易水道、トラクター購入により公共交通手段の提供に至るまで、様々な取り組みがなされてきた実績を持っている。
これら事業による収益の使途については、学校運営支援を最優先とすることが前提となっているが、余剰収益に関しては住民の生活向上を図るためのその他の地域落開発活動などに使うことも認めており、これによって直接的にも間接的にも教育環境の改善に寄与することが期待される。

3) 農家の生活・収入向上のための農業改良普及プロジェクト

農業を生業とする住民が大多数を占める本プロジェクト対象地域では、「循環型有機農業の技術移転による作物の生産性の向上」が実現すれば、直接的に住民の生活・収入向上を支援することができるため、他NGOとの連携による技術普及、資料の配布やデモンストレーションの実施、資材の貸出しなど、対象村内の各世帯への直接的・間接的技術指導を実施する。

本プロジェクトで採用する循環型有機農業技術(土着菌堆肥や竹酢液を利用した農業生産性向上)は、これまで日系NGOがミャンマーで技術移転し、多数の実績を残してきたものである。
農業指導では難しいとされる技術移転・成果発現の即効性についても十分に検証されており、非常に簡易且つ安価に実施できる技術であることから、短期間で貧困家庭の生活向上、ひいては児童の就学率向上に寄与できるものと期待している。